▌AIは嘘をつく
最近は、googleで検索すると「AIによる概要」という“答え”が冒頭に表示されるようになっています。
これが結構いい加減な答えが多く、世の中混乱させます。
たとえば、こちら、
発煙浮信号と自己発煙信号の違いの問い合わせに対して、、、

と、発煙浮信号は「主に夜間や視界が悪い状況で使用される」とありますが、間違っています。オレンジ色の煙がモクモク出るもので炎は出ません。つまり夜間に使用してもかえって視界が悪くなるだけ。昼間使用するものです。
また、
自己発煙信号は「手元で発火して煙を出す」とありますが、これもまったくの間違い。
結びつけた救命浮環ごと海面に投げ入れる落水救助用の安全備品です。「自艇の位置を知らせる」のではありません。
どちらもとんでもない間違いで、それも命に関わる話ですから看過できません。証拠に魚拓をとっておきました。
このてのAIはネット上の記述をまとめて答えをひねくり出しているようですから、元を正すためにもここで両者の違いをまとめたものを“ネット上”に掲載しておこうと思い至ったしだいであります。
▌改めて、発煙浮信号とは、
・小型船舶に搭載する法定備品で火工品の1つ
・自艇が要救助事態に陥っていることと自艇の位置を知らしめ
・着火するとオレンジ色の煙が出る。
・着火してから海面に投げ入れる
・昼間に用いる
炎ではなく煙がモクモクなので、これを着火とか点火とかいっていいのかよくわかりませんが。かなりのモクモクぶりなので、デッキ上で着火したら海に投げ入れる。つまり、海面に浮いた状態で煙りモがクモク、なので浮信号。缶詰状の物体なので、海に投げ入れて良いのか実際は悩むかもしれませんが、良いのです。
まあ、日本のヨット団対が開催する安全講習会では期限切れの信号紅炎を点火する体験はよくありますが、こちら発煙浮信号を実際に点火して海に投げ込むことはあまりないかも。筆者も実際に点火したことはありません。
煙なので、夜間に使うとそこだけ濃霧状態にしてしまうわけで、かえって航海灯や信号紅炎などの“光”を遮ってしまうやもしれず。なので、昼間用の遭難信号なのです。
・船検時の法定備品として沿海で1個、近海以上で2個の搭載が求められる
・SOLAS(LSA III 3.3)仕様の国際規格
外洋ヨットレースのルールの一つであるOSR(外洋特別規定)[OSR 4.23]で求められるOrange Smoke Flares (LSA III 3.3)は、この発煙浮信号のことです。
OSRではカテゴリー4以上(つまりすべてのカテゴリー)で2個の搭載が求められているので、沿海で船検をとっている艇は1個追加で搭載。限定沿海や沿岸で船検を取っている艇には1個も搭載されていないでしょうから、2個買い求めて搭載することになります。

▌方や、自己発煙信号とは、
・小型船舶に搭載する法定備品で火工品の1つ
・救命浮環に結びつけておき落水事故発生時に救命浮環と共に海面に投げ入れる
・オレンジ色の煙で、投入した救命浮環の位置を知らせる
普段から救命浮環と結びつけておき、点火索のエンドは艇側に接続した状態で装備。
落水事故発生時に救命浮環と共に海に投入。すると自動的に着火し発煙。
自艇は走り続けているわけですから、この煙は自艇の位置ではなく投げ入れた救命浮環の位置を目立たせるもの。ということで、落水事故対策の備品に分類すべきものです。自艇の位置を知らせるものではありません。
運良く落水者が救命浮環を掴むことができれば、煙で落水者の位置を。あるいは、落水者が救命浮環の位置を特定しやすくなる……もののようなんですが、形状は先に挙げた発煙浮信号と似ており、一緒に「沿海セット」としてパック発売されているので、パックのまま船内に保管しているケースがほとんどではないでしょうか。
そもそも、救命浮環から煙りモクモクさせて……意味あるのか。ケムたいだけで、かえって落水者を見失うことになりゃせんか。
ということで、
この自己発煙信号はおそらく日本独自のもので、OSRには記載がありません。
OSRで救命浮環の視認性を増す道具としては、カテゴリー2以上では[OSR 4.22.3 c) ii]で、ポールと旗(a pole and flag.)とあります。ダンブイ(danbuoy)とも呼ばれ、昔のレース艇の船尾には長い旗竿を収納するための穴がありました。
今は馬蹄形ブイとセットになった膨張式の物が広く出回っています。
小さなカプセルに入っていてプッシュピット(船尾側の手すり)に取り付けておき。いざというときはピンを引き抜けばスポンと海面に落下。馬蹄形ブイ(Horseshoe)とダンブイが自動膨張し、自己点火灯(self-igniting light)も点灯、となります。
落水対策としてはさらに、
[OSR5.01]で、高機能ライフジャケットの“搭載”が求められます。
これは150ニュートン(船検備品の約倍)の浮力と股紐、フラッシュライト。さらにはカテゴリー2以上になると個人用のAISも含まれており。となると救命浮環([OSR4.22.3]Lifebuoys)はオマケ、、というか補助的な装備ともいえるくらいです。膨張式の救命浮環を身に付けているようなものですから。
まあ、ライフジャケットは“常に着用”せよとはなっていないので、ライジャケ不着用の穏やかな海象時の不意の落水なんてこともあるでしょうから、そのときは救命浮環が活躍する、という解釈でどうでしょう。
……と考えると、
自己発煙信号は落水事故対策としては全く意味は無いかと思われます。
で、発煙浮信号と同じような使い方もできる“はず”なので、ないよりまし……だったらOSRの規定通り発煙浮信号を2個搭載した方がいいのかなとも思うんですけど。OSRの規定のように。
ということでまとめると、
発煙浮信号はSOLASでいうOrange Smoke Flare (LSA III 3.3)という国際規格品であるのに対して、自己発煙信号は日本独自のなにやら変な商品。
なので、このあたりきちんとした説明が難しいのかなと考察します。
(2025/6/12記)


